第254回 緑医学研究会

森瀬公友  平岩英一

 

1.日時

平成16年6月22日 (火曜日)

2.製品紹介

ブロプレス

3.講演

 心不全とARB 

名古屋市立大学病院  急性心臓疾患治療部

           助教授  大 手  信 之  先生

4.場所

緑区休日急病診療所

5.出席者

(敬称略  順不同)

池田 淑夫   

杉浦 嘉之   

中島 英   

平岩 英一

平岩 親輔

松山 裕宇   

山口 民夫 

片岡 邦孝   

川本 雅徳   

中野 佐上

佐藤 和之   

加藤 敏行   

森瀬 公友   

伊藤 惠   

永井  

  秀一   

阿部 和世   

岡戸 洪太   

岡戸 一世   

木村 尚子

中島 雄三   

阪野日出男   

久保 良二(名市大

 

 

 

   

 

 

 

   

   

   

 

 

 

「拡張性心不全とARB

                 名古屋市立大学病院急性心臓疾患治療部 大手信之

うっ血性心不全は先進国において国民健康上の重要な問題であり、我々臨床医はその疫学的背景、診断基準、エビデンスに基づいた治療法を熟知して日常診療に臨む必要がある。うっ血性心不全患者を左室収縮能指標である左室駆出率50%を以って、50%以下の収縮性心不全(SHF)50%以上の拡張性心不全(DHF)2分するとき、約40%の患者がDHFに分類される。ここで重要なことはSHFDHFの予後がほぼ同様に厳しいことである。

DHFとはいうものの拡張不全はどのように証明すればよいのであろうか?ヨーロッパ心臓学会の基準2によると、DHFの確定診断は1)明らかなうっ血性心不全の存在、2)左室駆出率50%以上、3)心臓カテーテル検査による左室弛緩の遅延、左室充満の異常、左室伸展性の低下の証明、の3項目が同時に証明されなければならないとされている。しかしながら、心臓カテーテル検査をすべての心不全患者に施行することは現実的ではなく、また通常左心カテーテル法が安全に施行できるのは治療により心不全が軽快してからである。その時点では左室拡張障害は消失しているかも知れない。Vasanらは、より現実的・臨床的なDHFの診断基準として、明らかなうっ血性心不全の存在および心不全発症から72時間以内に心エコー法あるいは核医学的手法によって測定した左室駆出率が50%以上、の2項目を満たせばDHFの可能性が非常に高い、また明らかなうっ血性心不全の既往があり現在の左室駆出率が50%以上であればDHFの可能性がある、と診断することを提唱している。現在この基準が世界的に広く用いられ、明らかなうっ血性心不全を呈する患者において、発症72時間以内に簡便な心エコー検査を行い、左室駆出率50%以上を証明することによってDHFと診断してもよいようである。

DHFの臨床像はSHFのそれとはかなり異なる。DHFは高齢者、女性に多く、高血圧の合併が多いことが報告されている。また、急性肺水腫の多くは高血圧を合併しDHFの範疇に入ることが多い。高齢者において高頻度に高血圧が合併することはよく知られているが、本邦における著しい高齢化社会の到来がDHFの循環器臨床での位置付けを今後さらに重要なものにしていくと思われる。

DHF治療に関するエビデンスの集積は未だ不十分であるが、少数例を対象とした研究においてアンジオテンシン受容体拮抗薬であるロサルタン、カンデサルタン投与が運動負荷時の高血圧反応の抑制、運動耐容能の改善、生活の質の向上をもたらすことが示されている。また、カンデサルタンの心不全予後改善効果に関する大規模臨床試験CHARM研究において、同薬がDHF(この場合左室駆出率>40%)における「心血管死または心不全による入院」を抑制する強い傾向(P=0.051)を有し、「心不全による入院」を有意に減少させた(P=0.017)ことは、DHFの治療における有用な情報である。これらのエビデンスを参考にするならば、DHF患者には十分な利尿薬とアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)が投薬されるべきであろう(すべての心不全に関する大規模臨床試験では十分量の利尿薬がほぼ全対象に投与されている)。また、DHFの素地となる高血圧の治療にも利尿薬、ARBが推奨されており、日常臨床において高血圧患者、心不全患者(SHFDHFにかかわらず)に利尿薬、ARBを投薬することはエビデンスを踏まえたモダンな治療法と言える。